精密機械・メッキ加工で役立つ基礎知識
日本の技術は世界的に高いものがあります。いろいろなジャンルで優れている日本ですが、手先が器用なこともあります。繊細な作業ができるのは他国ではできないからノウハウがあっても真似ができません。中でも精密機械の分野やメッキ加工の分野に注目してみたいと思います。このサイトでは【精密機械・メッキ加工で役立つ基礎知識】について詳しく解説します。
精密機械とはどういったモノを言うのでしょうか?
精密機械の種類は何種類あるのか?日常生活で精密機械を使っているシーンは多いですが、どれだけの数があるのかはイメージできません。逆に数え切れないほどの数があります。私達は、どういった機械を精密機械として捉えているのでしょうか。まずは、そこを切り口に考えたいと思います。
私達の身近にある精密機械で代表的なものは「家電機器」がありますが、ご家庭の中で使用する電子機器や電子機械のことです。例えば映像機器ならば、「テレビ」「ビデオテープレコーダー」「ブルーレイディスク」「ビデオカメラ」「DVD」「プロジェクター」などがあります。
音響機器の精密機械ならば「テープレコーダー」「ミニディスクレコーダー」「スピーカー」「CDプレーヤ」「アナログプレーヤー」「ワイアーレコーダー」などが思い浮かびます。最近話題の情報家電ならば「パーソナルコンピューター」「スマートフォン」「携帯電話」「ファクシミリ」があるでしょう。
これ以外に「白物家電」があります。これらは生活必需品の家電で「炊飯器」「エアコン」「電子レンジ」などが該当します。ゲーム機や音響機器などは娯楽に使われますから「娯楽家電」と呼ばれることもあります。
家電の進歩によって精密機械が増えてきた!
生活必需品となっている家電ですが、1950年(昭和25年)以前の日本には電化製品などは、ほとんど普及していませんでした。この時代に三種の神器と呼ばれた製品が次々に発売されました。その3つは「テレビ「洗濯機」「冷蔵庫」でした。今のように誰でも購入できる価格ではなくて、一部のセレブ層がユーザーで、庶民の憧れであったのです。
1960年(昭和35年)頃から日本の高度成長期に入り家電製品が爆発的に増えてきます。「インターフォン」「食器洗い機」「空気清浄機」などもでてきます。1980年(昭和55年)からはバブル景気が始まります。大型化・高級化した複雑な機能を持つ家電が登場するのです。
このあたりから娯楽家電のデジタル化が始まります。ゲーム機の開発も急激に進められてきました。生活水準が豊かになり高い収入を得ることになるにつれて、家電は高度になってきて複雑化してきます。これによって精密機器が増えてきたと考えられるのです。
精密機械である天体望遠鏡とそれを作る工作機器について
天体望遠鏡は精密機械ですが、種類はいくつかに分かれます。
・天体写真儀…………天体を望遠鏡を使って観察して、そのシーンを写真に撮影できるものです。
・光電赤道儀…………星の明るさを精密測定するために光電管を使用しているものです。
・反射望遠鏡…………望遠鏡の中でも反射鏡を使ったものです。
・屈折赤道儀…………筒の先端部分にレンズがついているタイプです。
・双眼望遠鏡…………天体ほどの距離ではないのですが、左右の目で見るので視差によって立体感がでるのが特徴です。
・グレゴリークーデ式太陽望遠鏡…………座ったまま観測できる天体望遠鏡で鏡筒がどこを向いていても接眼部が代わりません。太陽用眼視観測減光フィルターなど、太陽測定を目的にしています。
天体望遠鏡は技術の進歩によっていろいろありますが、果てしない距離の天体を観測するのです。もちろん精密機械でなければ役割を果たすことはできません。それらを作っているのが工作機器です。
ご家庭で工作機器を使うことはありませんが、私達の生活にも影響があります。どんなものがあるのか列記しておきましょう。
「普通旋盤「マシニングセンター」「卓上ボール盤」「アーク溶接機」「フライス盤」「折り曲げ機」「スポット溶接機」「帯のこ盤」「高速切断機」「半自動溶接機」「歯切り機」「溝切り機」「ガス溶接機」などです。
ものづくりをするための部品を加工する機械が工作機械ですが、精密な動作ができる必要があります。工作作業を機械化することで均一なクオリティーが得られます。加工精度のばらつきが少なくなります。作業スタッフの疲労や技術力に左右されることも少なくなります。
段取りなどの時間を大幅に短縮できるのは複数の工程を集約できるからです。こういった観点から精密機械を支えているのが工作機械であることがわかります。
「めっき」の基礎知識
めっきの歴史は古いのですが、1840年頃にイングランドの技術者達が電気めっきの特許を取得しました。バーミンガムで、めっき工場を稼働させ、これが世界的に拡大したのです。めっきの技法によって耐腐食や耐摩耗を備えた素晴らしい部品ができるようになりました。自動車産業が反映したのは、めっきの役割が大きいです。さらに19世紀に入ると航空産業を支えるようになり、さらなく技術革新が行われました。古い技術ですが、現代でも重要な技術で改良はさらに行われています。
鍍金(めっき)とは何なの?
モノの表面に金属の皮膜をつくることで、日本では仏像を作るときに用いられていました。巨大な大仏である奈良の大仏は水銀と金を使っためっきの技法だったと判明しています。今は複数のめっき技法が確立されています。
めっきをする目的とは?
どうしてめっきをするのか……それは、機能を強化することです。素材に「強度」「耐腐食性」「耐摩耗性」をプラスします。金属の中でもポピュラーなものが鉄です。鉄は加工しやすいのですが、鉄単体では酸化しやすいので、例え空気中にある水分だけでも錆びてしまう面を持っています。めっき技法を用いて、鉄に耐腐食性を付加します。トタンは鉄に亜鉛でめっきした製品のことです。
めっきは強度を強くするだけでなく、金属の表面に高級感を出すこともできます。素材感を変えたりする目的でも、めっきされます。例えば、アクセサリー。比較的安い金属をベースに金や銀でめっきします。これによって金製品や銀製品よりもリーズナブルな製品を作れるわけです。
めっきをする方法とは?
めっきの方法はいろいろあるのですが、その中でも一般的な手法が「電気めっき」です。電流を利用しているのが特徴で、原子に秘密があります。原子は電子を失いやすいとかもらいやすい性質があります。(高校のときに習いました?)それは原子の種類によって違うのです。電子を失いやすい金属原子は陽イオンと呼ばれ、電子をもらいやすい金属原子は陰イオンと呼ばれます。
めっきに利用する金属をプラス極・めっきをする素材をマイナス極とします。そしてめっきに使用する金属にめっき液である電解液に浸して電流を流すのです。めっきに使用する金属はめっき液に溶け出してきます。そして、電子を放出してプラスを帯びた「金属陽イオン」になります。
この金属陽イオンはマイナス極に引きつけられます(磁石と同じ原理)。素材の表面に陽イオンが集まってきて、素材に流れてくる電子を受け取ることによって素材の表面に薄い膜を作ってくれるのです。
こういった性質を応用して電流の量やめっき液を調整しながら、いろいろな金属が多様な厚さでめっきされるわけです。説明したメカニズムでご理解いただけるでしょうが、金属ではないプラスチック素材にめっきする場合は、こういった「電気めっき」をすることはできません。できない場合は「酸化」と「還元剤」を使用することで電子の流れを生み出します。素材の表面に金属を析出させめっきするのですが、これを「無電解めっき」と呼ばれる方法です。
これ以外にも溶解した亜鉛などの金属に素材を浸してめっきする「溶解めっき」の方法もあります。金属を一度蒸気にして素材に蒸着させる「蒸着めっき」などの手法もあるのです。
めっきをする場合に大事な洗浄とは?
めっきをする場合は金属の被膜を密着させなければなりません。そのために素材表面の洗浄がキーポイントになります。洗浄がしっかりとできていない場合は、被膜の密着不足や形成不足のトラブルになります。クオリティーの低いめっきになるのです。
洗浄工程はめっきのクオリティーを左右するので1回の工程ではなく複数回の工程があります。複数にするのは、素材の表面には複数の汚れがついている可能性があるからです。
めっきをするための洗浄は工業規格になっており厳密に定義されています。「研磨」「酸を使っての洗浄」「電解での洗浄」「アルカリ物質での洗浄」「化学溶剤での洗浄」などがあります。油膜・酸・アルカリ・埃・ゴミ・化学物質が素材についているとめっきには好ましくありません。
めっき加工の種類
錆を防いだり、綺麗に見せたり、素材を保護するために金属の薄い膜を覆うことをめっきと言います。金属などの材料の表面にすることは普通になっています。おもなめっきの種類をご紹介しておきたいと思いますので参考にしてみてください。
亜鉛めっき
鉄の板に亜鉛の薄い塗膜を覆うことによって耐蝕性が向上するので、用いられる方法です。一般的には亜鉛めっきをしたあとに、クロムメッキ(クロメート処理)をします。これをすることによって、亜鉛層の上からクロムの層を重ねることができます。その結果、より強い耐蝕性を得ることが可能になります。
耐蝕性が求められる部品としては、医療機器の構造部品です。色の種類は「黒色」「ユニクロ」「有色」などがあります。
ニッケルめっき
ニッケルの薄い膜で覆うめっき方法で、耐蝕性が向上するだけでなく、光沢があるのが特徴です。高級感を得られるので装飾目的で利用される場合も多いです。ニッケルの光沢を長く維持するために、ニッケルめっきの上からクロムめっきをする場合が多いですね。外観部品であるモニターのフレームに、ニッケルめっきをしている商品を見ることができます。
銅めっき
銅の薄い塗膜で覆い隠すめっき方法で、電気導電性・ロウ付性・耐蝕性・加工性に優れているのが特徴です。銀めっきの下地に使われている場合も多いです。
銀めっき
電気電装性やはんだ付け性に優れているのが特徴です。シルバーの独特の輝きがありますから、ジュエリーなど装飾品に用いられることも多いです。
アルマイト処理
これはめっきではなくて、アルミニウムの表面の耐蝕性を向上させるために、強制的に酸化皮膜を生成させる方法です。耐摩擦性も向上しますし、表面硬度も高まります。めっきの仕上げに用いられるケースが多いですね。医療機器の構造部品などは耐蝕性が求められますのでアルマイト処理をしている場合が多いです。
アロジン処理
アルミニウムにクロメート処理を施しする方法で、アロジンは日本パーカライジング社の登録商標なのです。とても有名な方法なので、アロジン処理という名前が業界では通っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
精密機械・メッキ加工で役立つ基礎知識をご紹介してまいりました。日本の技術の素晴らしさがご理解いただけたでしょう。さらに興味深いテーマを設定して別ページでご紹介していますので、参考にしてみてください。めっきの方法もさまざまなものがあるのがご理解いただけたでしょう。鉄だけでは錆びてしまって、長く使うことができません。私達の周囲にもめっきで加工された商品が多いのですが、どんな風になっているのかを少しは理解できたのではないでしょうか。さまざまな技術の中で私達は便利な生活ができているのがわかります。これからも、どんどん新しい技術がでてくるのでしょう。